建物の管理者・オーナーの方へ
増築・改修で防火シャッターを新設するときの確認事項|建築確認と設計者との分担
建築確認が関わるか、設計者との分担、新設の防火シャッターに求められる装置、工事中と工事後の手続きまで

工場の増築、倉庫の間仕切りの変更、店舗の改装。こうした工事の打ち合わせの中で、設計者から「ここに防火シャッターが必要です」と言われることがあります。
一般のシャッターの新設なら、開口の寸法や上部の収まりを確認して、製品を選んで取り付ければ工事は進みます。しかし防火シャッターは、建物全体の防火の計画の一部です。どこに、どの性能のものを設けるかは、建物の条件と設計で決まります。
防火シャッターの新設は、「製品を付ける工事」だけでは完結しません。 この記事では、増築や改修で防火シャッターを新しく設けるときに、所有者・管理担当者が押さえておきたい手続きと、設計者・施工者との分担をまとめます。
防火シャッターの新設が話題になる場面
防火シャッターは、建物を区切る「防火区画」の境目などで、火災のときに開口をふさぐ役割を担います。区画の取り方が変わる工事では、その境目に新しく必要になることがあります。
新設が必要かどうかが話題になるのは、たとえば次のような場面です。
- 建物を増築して、床面積や区画の取り方が変わる
- 倉庫や工場の中の間仕切りを変更し、大きな開口を設ける
- 店舗や事務所の改装で、区画の位置や出入口が変わる
ただし、必要かどうかは、建物の用途・規模・構造・所在地、開口の位置などによって変わります。同じような増築でも、建物が違えば結論が変わることがあります。「この工事なら防火シャッターが必要」「この規模なら不要」と一律には言えません。まずは設計者に、どの規定にもとづいて、どの位置に、どの性能の防火設備が必要なのかを確認しましょう。
建築確認が関わるかを確認する
増築や改修では、工事の内容によって建築確認の手続きが必要になります。
増築と、大規模の修繕・模様替
増築は、建物の延べ面積を増やす工事です。また、主要構造部の一種以上について過半を修繕・模様替する工事は「大規模の修繕」「大規模の模様替」と呼ばれ、建築確認が必要になる場合があります。国土交通省の資料では、過半かどうかは主要構造部ごとに判断すると説明されています。
小さな増築でも、地域によっては確認申請が必要
自治体の案内では、防火地域・準防火地域の外で床面積10平方メートル以内の増築を行う場合は確認申請が不要とされる一方、防火地域・準防火地域内では10平方メートル以内でも確認申請が必要とされています。また、建築確認が不要な工事でも、建築基準法などの基準に適合させる必要があることも示されています。
既存の部分にも影響することがある
法令の改正などで、今の基準に合わなくなっている建物を「既存不適格」といいます。国土交通省の資料では、既存不適格の建物で増築や大規模の修繕・模様替を行う場合、これを機会に現行の基準への適合が求められる場合があり、緩和の扱いもあると説明されています。
つまり、増築部分だけでなく、既存の建物の防火区画まで見直しの対象になることがあります。どこまでが対象になるかは、設計者が調べたうえで、特定行政庁や指定確認検査機関と相談して決まります。手続きの要否や扱いは特定行政庁によって異なるため、早い段階で設計者に確認しておきましょう。
設計者・施工者・シャッター工事会社の分担
防火シャッターの新設では、関わる人が多くなります。誰が何を決めるのかを最初に整理しておくと、手戻りを防げます。

| 立場 | 主に決めること・行うこと |
|---|---|
| 設計者 | 防火区画の位置、必要な防火設備の種類と性能、建築確認の手続き |
| 施工者(建設会社) | 工事全体の工程、天井・壁・電気など他の工事との調整 |
| シャッター工事会社 | 条件に合う製品の選定、開口まわりの納まりの確認、取り付けと動作確認 |
| 所有者・管理担当者 | 工事の発注と承認、稼働しながら工事する範囲の判断、引き渡し後の管理 |
シャッター工事会社には「設計で決まったこと」を渡す
シャッター工事会社が製品を選ぶには、設計で決まった区画の位置と、求められる性能が必要です。これらが決まらないまま見積もりを取ると、後で製品が変わり、見積もりもやり直しになります。設計図の該当部分や、設計者の指示を書いたメモを渡すと、製品の検討が進めやすくなります。
納まりは、天井と壁の工事と一緒に考える
防火シャッターの上部にはケースが、左右にはレールが付きます。天井の高さや梁、壁の下地、配管や照明との取り合いによって、製品の選び方や工事の順番が変わります。天井や壁を仕上げた後では調整が難しくなるため、内装の工事が始まる前に、施工者とシャッター工事会社で納まりを確認しておくことが大切です。
新しく設ける防火シャッターで確認すること
防火設備としての条件
建築基準法では、防火設備は国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの、または国土交通大臣の認定を受けたものとされています。設計で求められた性能を満たす製品かどうかを、設計者とシャッター工事会社の間で確認します。
感知器と連動して閉まる仕組み
防火区画に使う防火シャッターでは、煙や熱を感知して自動で閉まることが求められる場合があります。その場合は、感知器や連動制御器、自動閉鎖装置、予備電源といった装置も告示に沿って備えることになります。新設では、天井や壁の工事の前に、これらの装置をどこに置き、配線をどう通すかまで決めておきましょう。
危害防止装置
業界団体の案内によると、平成17年(2005年)12月1日から、防火シャッターなどを新たに設ける場合には、閉まるときに人が挟まれないようにする危害防止の仕組みの設置が義務づけられています。新設の防火シャッターでは、この仕組みも含めて製品を選びます。
工事中と工事の後に必要な手続き

営業しながら工事する場合
店舗や病院、ホテルなど、多くの人が利用する建物で、営業を続けながら避難施設などに関わる工事を行う場合、建築基準法第90条の3にもとづく安全上の措置に関する計画の届出が必要になることがあります。自治体の案内では、対象の用途や規模、工事着手前の届出の時期が示されています。
消防への届出
工事の内容によっては、消防への届出が必要になる場合もあります。たとえば東京消防庁は、修繕や模様替え、間仕切りの変更などの工事について、着手の7日前までに管轄の消防署へ届け出るよう案内しています。手続きの名前や期限は地域によって異なるため、所轄の消防署で確認してください。
引き渡しの後は定期検査の対象になることがある
防火設備は、建築基準法第12条にもとづく定期検査・報告の対象になることがあります。対象の範囲や報告の時期は特定行政庁によって異なります。新設した防火シャッターが対象になるか、最初の報告がいつになるかを、引き渡しの前に確認しておくと、管理の引き継ぎがスムーズです。
費用が変わる要素と、やってはいけないこと
防火シャッターの新設は、設計の条件や建物の状況によって工事の内容が大きく変わります。ここでは金額の目安ではなく、費用が変わる主な要素を整理します。
| 費用が変わる要素 | 内容 |
|---|---|
| 製品の種類と大きさ | 開口の幅と高さ、求められる性能 |
| 連動する装置 | 感知器・連動制御器・自動閉鎖装置の数と配線の距離 |
| 納まり | 天井や梁との取り合い、下地の補強の要否 |
| 他の工事との関係 | 天井・壁・電気の工事との順番、既存部分の解体と復旧 |
| 作業の条件 | 稼働しながらの工事か、夜間・休日の作業か、搬入の条件 |
※費用は、シャッターの種類・大きさ・設置状況、部品の取り寄せの有無によって変わります。正確な費用は、現地で状態を確認したうえでお見積もりします。
【やってはいけないこと】
- 設計者に確認しないまま、防火シャッターの位置や性能を決める
- 建築確認や届出の要否を確認しないまま、工事の日程を決める
- 天井や壁を仕上げた後に、シャッターの納まりを検討する
- 一般のシャッターを付けて、防火シャッターの代わりにする
発注の前に準備しておきたいこと

相談の前に、次のものを分かる範囲でそろえておくと、現地確認と見積もりが具体的になります。
- 設計図の該当部分と、設計者の指示
- 建築確認や届出を誰が担当するか
- 全体の工程表と、天井・壁の工事の時期
- 工事中も使い続ける通路や出入口
- 引き渡しの後に管理を担当する人
管理会社やオーナーの承認が必要な物件では、その手続きもあわせて確認しておきましょう。
日本シャッターサービスセンターでできること

日本シャッターサービスセンターでは、防火シャッターの新設・交換、修理、保守点検、法定の定期検査のご相談を承ります。設計で決まった位置と性能をもとに製品を検討し、開口まわりの納まりを現地で確認します。設計者や施工者との打ち合わせにも対応します。
防火シャッターの点検・法定の定期検査を行える資格者が複数在籍し、防火シャッターの点検・検査は年間約500件の実績があります。新設の後の点検・検査まで、同じ窓口でご相談いただけます。新設・防火・法人向けの工事には、5年間の施工保証が付きます。
一般のシャッターの新設で確認することは、別の記事で解説しています。
まとめ
増築や改修での防火シャッターの新設は、建物全体の防火の計画の一部です。必要かどうか、どこにどの性能のものを設けるかは、建物の条件と設計で決まります。工事の内容によっては建築確認が必要になり、既存の部分まで見直しの対象になることもあります。
進める順番は、設計者に位置と性能を確認し、手続きと分担を整理したうえで、製品と納まり、工事中の扱いを決めることです。新設の防火シャッターには、感知器と連動して閉まる仕組みや危害防止の仕組みも関わります。引き渡しの後は定期検査の対象になることがあるため、対象かどうかと時期も確認しておきましょう。手続きの扱いは特定行政庁や地域によって異なるため、早めの確認が欠かせません。
防火シャッターの新設・点検・検査は「防火シャッター」、工場・倉庫・テナントビルなど法人の建物での工事は「法人向けシャッター工事」のページもご覧ください。
【付録】この記事で使った用語
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 防火シャッター | 火災のときに閉まり、炎や煙が広がるのを抑えるためのシャッター。 |
| 防火区画 | 火災が広がらないように、建物の中を壁や床、防火設備で区切ること。 |
| 防火設備 | 防火シャッターや防火戸など、火災の広がりを抑えるための設備。 |
| 建築確認 | 工事の前に、計画が建築基準法などに適合しているかを確認する手続き。 |
| 大規模の修繕・模様替 | 主要構造部の一種以上について、過半を修繕・模様替する工事。 |
| 既存不適格 | 法令の改正などにより、今の基準に合わなくなっている建物や部分。 |
| 特定行政庁 | 建築主事を置く自治体。建築確認や定期報告などの扱いを定める。 |
| 連動制御器 | 感知器からの信号を受けて、防火シャッターを閉める指示を出す装置。 |
| 自動閉鎖装置 | 連動制御器の指示を受けて、防火シャッターを自動で閉める装置。 |
| 予備電源 | 停電のときなどに装置を動かすための電源。 |
| 危害防止装置 | 閉まる途中で人に触れると止まり、人がいなくなると再び閉まる仕組み。 |
| 納まり | シャッターと天井・梁・壁など、ほかの部分との取り合いの状態。 |