建物の管理者・オーナーの方へ
病院・クリニックのシャッターと防火設備
定期検査の対象の確かめ方、患者がいる中での点検の進め方、夜間を含めた日頃の管理

病院やクリニックの廊下や階段まわりには、防火シャッターや防火戸が設けられていることがあります。普段は開いたまま使われ、火災のときに閉まって、炎や煙の広がりを抑えます。
医療施設には、歩くのに介助が必要な方や、点滴などで動きにくい方も来られます。入院の設備がある施設では、夜間も患者がいて、職員の数は日中より少なくなります。医療施設の防火設備は、「いざというときに確実に閉まること」と「点検や誤作動で閉まるときに人を危険にさらさないこと」の両方が求められます。
この記事では、病院・クリニックの施設担当者や事務長、医療テナントが入る建物の管理会社の方に向けて、定期検査の対象の確かめ方、患者がいる中での点検の進め方、夜間を含めた日頃の管理をまとめます。
病院・クリニックでシャッターが使われる場所
医療施設のシャッターは、防火シャッターだけではありません。まず、どこに何があるかを整理しておきましょう。

| 場所 | 主な役割 | 管理で気をつけること |
|---|---|---|
| 廊下・吹き抜けの防火シャッター | 火災のときに閉まり、区画をつくる | 閉まる位置に物を置かない |
| 階段・エレベーターまわりの防火設備 | 煙が上の階へ広がるのを抑える | 防火戸と防火シャッターの両方を確認する |
| 夜間・救急の出入口 | 時間帯によって開け閉めする | 開け閉めの担当と時間を決める |
| 物品の搬入口 | 薬品・食材・リネンなどの搬入 | 台車の接触、開け閉めの回数 |
| 倉庫・書庫 | 物品や書類の保管 | 防火の指定があるかを図面で確認する |
| ビルに入るクリニックの入口 | 閉院後の防犯 | 誰の設備かを契約で確認する |
防火シャッターかどうか分からないものがあれば、設計図書や本体の表示、管理会社への確認で調べられることがあります。
病院・有床診療所と防火設備の定期検査
建築基準法に基づく定期報告制度では、対象の建物の防火設備について、資格者が検査し、所有者・管理者が特定行政庁へ報告します。
国土交通省は、制度を見直した背景として、福岡市の診療所火災などを挙げています。消防庁の検討部会の報告書では、この火災で階段室の防火戸が一部を除いて閉鎖せず、煙が上の階へ広がったことが、多くの死傷者が出た一因と考えられるとしています。防火設備が閉まらなければ、区画は役目を果たせません。
国土交通省の制度の概要の資料では、防火設備の報告の対象として、病院・有床診療所などの防火設備が挙げられています。ただし、対象の範囲や報告の時期は、建物の用途や規模、所在地の特定行政庁によって異なります。
ビルに入るクリニックの場合
テナントとしてビルに入るクリニックでは、建物全体の用途や規模によって、対象かどうかが決まります。共用部の防火シャッターは、建物のオーナーや管理会社が検査を手配していることが多いでしょう。院内に防火設備がある場合は、検査の日程や立会いについて、管理会社と事前に打ち合わせておくと安心です。
定期検査・報告の進め方は、別の記事で解説しています。
患者がいる中で点検を進めるには
防火シャッターの検査では、感知器を作動させるなどして、実際に閉まるかを確かめることがあります。医療施設では、この「閉める」作業そのものに配慮が必要です。
国土交通省は、防火シャッターの閉鎖作動時の危害防止についての通知で、消防用設備の点検の際に防火シャッターが連動して作動しないよう連動スイッチを切るなどの措置や、利用者のいない時間帯に点検を実施すること、作業員を適切に配置することを求めています。

区画ごとに日時を分ける
入院のある病院では、建物から人がいなくなる時間帯はありません。そのため、外来の診療時間外に外来の区画を、病棟は人の移動が少ない時間帯に区画ごとに、というように、場所ごとに日時を分けて進めるのが現実的です。看護部門や外来の担当者と、どの時間帯なら通行を止められるかを事前に相談しておきましょう。
搬送の動線を確保する
点検中は、シャッターの下を一時的に通れなくなることがあります。ストレッチャーや車いすでの移動、検査や手術への搬送が予定されている時間帯を避け、別のルートを当日の担当者と共有しておくと、現場の混乱を防げます。
消防用設備の点検と日程を合わせる
自動火災報知設備などの消防用設備の点検と、防火シャッターの検査を別の会社が担当している施設もあります。消防用設備の点検で感知器を作動させたときに、防火シャッターが連動して降りてしまうことのないよう、日程と連動の扱いを両方の会社と施設側で共有しておきましょう。どちらの点検の日に、誰が立ち会うかも決めておくと安心です。
危害防止の基準と、古い防火シャッター
国土交通省の通知では、平成17年12月に施行された改正建築基準法施行令で、防火シャッターの閉鎖作動時の危害防止の基準が設けられたことが説明されています。あわせて、既存の建物の所有者・管理者に対しても、この基準に適合させるための改修を行うよう指導することを、行政に求めています。古い防火シャッターがある場合は、危害防止のための装置が付いているかを点検のときに確認しておくと安心です。
日頃の管理で気をつけること
厚生労働省の「病院等における防火・防災対策要綱」では、防災設備について、非常時に使用できないことがないよう常時点検をしておくことが挙げられています。夜間防火管理責任者を配置すること、患者が不在となる外来部門も含めて定期的に夜間巡視を行うこと、改築中は防火設備などを常に点検することにも触れています。
また消防法では、病院などの防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者に対し、避難上必要な施設や防火戸の閉鎖の支障になる物を放置しないよう管理することを求めています。
閉まる位置に物を置かない
医療施設の廊下には、ストレッチャーや車いす、配膳車、リネンカート、点滴スタンドなど、動かせる物が多くあります。忙しい時間帯に、防火シャッターの閉まる位置に一時置きされてしまうことも少なくありません。床に印を付ける、置き場所を決めて周知するなど、部署を問わず分かる工夫をしておきましょう。
【やってはいけないこと】
- 防火シャッターの閉まる位置に、ストレッチャーや配膳車などを置いたままにする
- 動作を確かめるために、職員が防火シャッターを手動で閉めてみる
- 誤作動を防ぐ目的で、感知器や連動の装置を自分で切ったままにする
- 点検で指摘された不具合を、次の点検まで様子見で済ませる
夜間巡視で見ておきたいこと
夜間巡視の項目に、防火シャッターの閉まる位置に物がないか、表示灯や操作部に異常な表示がないかを加えておくと、日中に気づきにくい変化を拾えます。気になる表示は、写真を撮って記録しておきましょう。
夜間に防火シャッターが降りたら
夜間に防火シャッターが降りた場合は、まず火災でないかを確かめ、火災の兆候があれば避難と通報を優先します。降りてくるシャッターの下には入らず、患者や職員にも離れてもらいます。
火災でないことが確かめられても、自分で巻き上げようとしないでください。手順が分からないまま戻すと、装置が待機の状態に戻らず、次の火災のときに閉まらないおそれがあります。日時、場所、そのとき何をしていたかを記録し、専門業者へ復旧を依頼しましょう。
同じような状況でお困りでしたら、ご相談ください
設置場所、手動・電動の種類、今の状態をお知らせいただくと、確認しやすくなります。写真はLINEで送れます。
費用が変わる要素と、改修・新設のときに確認すること
医療施設の防火シャッターの点検・検査・修理は、建物や作業の条件によって内容が大きく変わるため、ここでは金額の目安ではなく、費用が変わる主な要素を整理します。
| 費用が変わる要素 | 内容 |
|---|---|
| 作業の種類 | 保守点検、法定の定期検査、復旧、修理・部品交換、新設・交換 |
| 台数と設置場所 | 建物内の台数、病棟・外来など設置されている区画 |
| 作業の分け方 | 区画ごとに日時を分けるか、何日に分けるか |
| 作業の時間帯 | 診療時間外、夜間、休日に作業するか |
| 関連する装置 | 感知器、連動制御器、予備電源の確認が必要か |
| 製品と状態 | 部品の取り寄せが必要か、本体の交換が必要か |
※費用は、製品の種類・状態・設置状況、部品の取り寄せの有無によって変わります。作業の時間帯によって料金が変わる場合があります。正確な費用は、現地で状態を確認したうえでお見積もりします。
改修・増築のとき
病棟の改修や増築、テナントの内装工事では、防火区画や防火設備の位置が変わることがあります。工事中も防火設備が働く状態を保てるか、工事の後に新たな防火シャッターが必要になるかを、設計の段階から確認しておきましょう。
日本シャッターサービスセンターでできること
日本シャッターサービスセンターでは、病院・クリニックを含む建物の防火シャッターの保守点検、法定の定期検査、作動後の復旧、修理・部品交換、新設・交換のご相談を承ります。防火シャッターの点検・検査を行える資格者が複数在籍し、点検・検査は年間約500件の実績があります。

点検の前に、防火シャッターの場所と台数、通行を止められる時間帯を伺い、区画ごとの進め方をご案内します。外来や病棟の方との日程の調整にも合わせて計画します。新設・防火・法人向けの工事には、5年間の施工保証が付きます。
まとめ
病院・クリニックの防火設備は、患者が利用し、入院施設では夜間も人がいるという条件の中で、確実に閉まる状態を保つ必要があります。定期検査の対象かどうかや報告の時期は、建物の用途や規模、所在地の特定行政庁によって異なるため、まずは報告書の控えや管理会社、行政庁で確認しましょう。
点検は、区画ごとに日時を分け、搬送の動線と通行の案内を決めて進めます。日頃は、閉まる位置に物を置かないこと、夜間巡視で表示や周りを確かめることが大切です。夜間に降りた場合は、自分で戻さずに専門業者へ相談してください。
防火シャッターの点検・修理は「防火シャッター」、法定の定期検査は「防火設備の点検・検査」のページもご覧ください。

【付録】この記事で使った用語
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 防火シャッター | 火災のときに閉まり、炎や煙が広がるのを抑えるためのシャッター。普段は開けたまま使う。 |
| 防火設備 | 防火シャッターや防火戸など、火災の広がりを抑えるための設備。 |
| 防火区画 | 火災が広がらないように、建物の中を区切った範囲。 |
| 有床診療所 | 入院のための病床がある診療所。 |
| 定期報告制度 | 建築基準法第12条に基づき、対象の建物の防火設備などを検査し、特定行政庁へ報告する制度。 |
| 特定行政庁 | 建築に関する行政を担う自治体。定期報告の対象や時期を定め、報告を受ける。 |
| 危害防止 | 閉まる途中の防火シャッターが人に危害を与えないようにすること。基準は建築基準法施行令などで定められている。 |
| 連動制御器 | 感知器からの信号を受けて、防火シャッターを閉める指示を出す装置。 |
| 夜間防火管理責任者 | 厚生労働省の要綱で、夜間の防火管理のために配置するとされている責任者。 |